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歯科開業の事業計画書 覚えておきたい作成ポイントを解説

歯科開業の事業計画書 覚えておきたい作成ポイントを解説

歯科医院開業のイメージが具体的になってきた段階で、事業計画書の作成を始めることになります。事業計画書は開業後の経営の指針となることはもちろん、金融機関から融資を受けるためにも欠かせません。この記事では、歯科医院を開業する際の事業計画書について、その重要性や作成のポイントなどをご説明します。

歯科開業において事業計画書はなぜ重要なのか

歯科医院を新規開業する際に、事業計画書が必要となるのは主に以下2つの場面です。

金融機関からの融資を受ける

歯科医院を開業するには資金が必要です。具体的な金額は規模や立地などの条件にもよりますが、ユニットやレントゲンをはじめとする医療設備、内外装工事、当面の運転資金、広告費、スタッフの求人費用まで含めると数千万円規模になるのが一般的です。こうした資金は金融機関からの融資で賄うことになりますが、その審査を受けるためには事業計画書が必要となります。

事業計画書には事業の収支計画やローンの返済計画が盛り込まれているため、金融機関が融資の可否を判断するための重要な材料のひとつとなります。スムーズに審査を通すためには、現実的かつ無理のない事業計画を立てることが大切です。

 

開業後の経営の指針とする

事業計画書は開業後の経営の指針としても重要なものです。どれだけ綿密に計画を立てていても、思いどおりに事業が進まないことは必ずあります。想定していたよりも利益が出なかったり、集患が進まなかったりといったトラブルは決して珍しいものではありません。

こうしたトラブルが起こった場合でも、事前にしっかりと事業計画が立てられていれば、それを経営の指針としたり、そこから経営改善のヒントを得たりすることができるでしょう。内装工事や広告費などで予定外の支出が発生した場合も、収支計画や返済計画の数字と付き合わせることで、このまま事業を進めて問題ないのか、それとも軌道修正が必要なのかを判断することができます。

事業計画書の項目

事業計画書に盛り込む項目には、以下のようなものがあります。

開業の動機

歯科医院を新規開業するにあたり、その意志や熱意をアピールするための項目です。抽象的な記述は避け、自身の経験や体験を踏まえた具体的な内容になるよう気をつけます。また、長くてもA4用紙1枚程度に収めるのがベターです。

 

経営者(開業医)の経歴

出身大学、卒業年度、勤務年数、取得資格、マネジメント経験など、経営者(開業医)の経歴について記述する項目です。融資可否の判断にも大きく影響する項目のため、これまでどのような経験をしてきたか、それを事業にどのように生かすかを具体的に記述します。

 

事業コンセプト

開業しようとしている歯科医院について記述する項目です。どのようなコンセプトの歯科医院なのか、保険診療と自由診療の割合、自院の強みやアピールポイントはどのようなものかをまとめます。

 

将来の展望

事業が軌道に乗ったあとの将来的な展望について記述する項目です。どのような層の患者さんをおもに獲得してきたいか、売上目標やそれを達成するための戦略などを具体的に記載します。

 

資金計画書

開業に必要な資金、その調達方法などについて記載します。初期費用(ユニットやレントゲンなどの医療機器、内外装工事費用、備品、材料費、広告費、スタッフの求人費用など)の概算のほか、月々の売上や支出の見積もりについても記載します。また、調達方法の項目には自己資金や家族や知人から借り入れる予定金額についても記載しておきましょう。(月々の売上や支出の見積もりについては、次章以降で詳しく説明しています。)

資金計画書の作成ポイント

事業計画書に記載する資金計画書は、次のような手順で作成します。資金計画書は特に融資の可否を判断する重要なポイントとなるため、現実的で無理のない計画を立てることが大切です。

①売上の見積もり

資金計画書を作成するためには、まず診療収入の年間売上の見積もりを行います。診療収入は一般的に以下の計算式で算出します。

年間の診療収入 = 診療単価 × 1日の患者数 × 年間の診療日数

「診療単価」は診療内容によっても大きく異なりますが、「事業コンセプト」の中に記載している保険診療と自由診療の割合や歯科医院のコンセプト(患者層や強み)などを考慮しながら、1人当たりの平均単価を算出します。また、「1日の患者数」は開業を予定しているエリアの診療圏調査をもとにするといいでしょう。「年間の診療日数」は営業予定の日数をあらかじめ決めておき、その数字をもとに算出します。

 

②初期費用の見積もり

次に、歯科医院を開業するための初期費用を見積もります。具体的な項目は物件の種類によっても異なりますが、一般的に以下のようなものが挙げられます。

・医療機器費用:ユニット、レントゲンなど
・物件取得費用:不動産手数料、礼金、保証金など
・内外装工事費:テナント、自己所有など、物件の形態によって異なります
・宣伝広告費:開業当初は新規患者を集めるため、予定以上にかかることがあります
・求人広告費:歯科衛生士などスタッフの求人広告費用
・コンサルティング費用:必要があれば発生

 

③支出の見積もり

月々発生する支出の見積もりを固定費と変動費に分けて算出します。どのような事業でも同じことですが、キャッシュフローを安定させ利益を増加させるためには、固定費を抑えることが重要です。

固定費:
・賃貸料:テナントの家賃、共益費など
・人件費:歯科衛生士などスタッフの人件費
・リース料:ユニットやレントゲンなどのリース費用
・ローン返済:開業時に借りたローンの返済
・水道光熱費:歯科医院の運営にかかる水道代や電気代など
・通信費:ネットワーク、サーバー費用など
・広告宣伝費:集患のための宣伝費用

変動費:
・診療材料費:診察に使用する材料や薬品の購入費用
・外注費:技工費用など

 

④キャッシュフロー表を作成

月々の売上や支出、初期費用の見積もりができたら、それを参考にキャッシュフロー表を作成します。事業計画書に記載するためにはおよそ3〜5年分を目安に作成し、支払いに必要な資金が不足しそうな箇所がないかを確認します。当然ながら、資金繰りが厳しい箇所があれば融資の判断は厳しくなるため、ゆとりを持った経営ができているかを事前にしっかりと確認しておきましょう。

事業計画書作成時の注意点

事業計画書を作成する際には、特に以下の2つのポイントに注意しておきましょう。

収支計画は現実的に見積もる

収支計画は、事業計画書のなかでも融資の可否を判断する重要なポイントとなります。できるだけ明るい見通しを示したいところですが、あまり楽観的すぎる見通しで計画を立てるのはおすすめできません。収支計画はあくまで診療圏調査や実際の業者見積もりなどの根拠に基づき、現実的に見積もることが重要です。

特に開業当初は、予定外の工事が発生したり、スタッフの求人や集患のための広告費が予想以上に発生したりといったトラブルも起こりがちです。そのため「想定より集患がうまく進まないパターン」「自由診療の割合が少ないパターン」などのように、経営がうまくいかなかった場合のパターンも想定し、それでも経営に影響がないようにリスクヘッジすることが重要です。

 

必要に応じて修正を行う

歯科医院の開業準備は、必ずしも自分が思い描いたように進むとは限りません。開業を予定していた地域に手ごろな物件が見つからなかったり、初期費用を抑えるつもりで居抜き物件を探したのに医療機器のメンテナンス費用がかさんだりといったケースはよくあることです。

こうした場合、当初予定していた計画にこだわりすぎることなく、柔軟に計画を修正していくことが大切です。費用が思った以上にかさむ場合は見積もり項目を見直すだけでなく、開業エリアや時期を再考することで解決の糸口が見えるかもしれません。大切なのは開業することではなく、歯科医院の経営を成功させることです。経営上、計画の修正が必要と感じた場合は柔軟に対応するようにしましょう。

開業を考える際は、まずは事業計画書の作成から

事業計画書は銀行など金融機関から融資を受けるためだけでなく、開業後に安定した経営を続けていくためにも大切なものです。漠然と数字を描くのではなく、根拠に基づいて現実的に数字を積み上げることで、開業後のリスクヘッジとしても機能してくれるでしょう。

 

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