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歯科医院の労務管理で実現する働きやすさ

歯科医院の労務管理で実現する働きやすさ

全国の労働相談窓口に寄せられる労使関係の相談は増え続けています。歯科医院においても労務や人材の重要性は増しており、しっかりとした対策が必要な時期を迎えています。特に課題となっているのは、勤務医や歯科衛生士の採用難や働き方改革への対応です。また医院運営には歯科医師や歯科衛生士、受付スタッフなどの様々な職種のスタッフが携わっています。それゆえに勤務日時の調整や管理など、医療現場ならではの難しさもあります。この記事ではスタッフが長く活躍できる歯科医院を作るために、労務管理の基本から具体的な取り組みまで、分かりやすく解説します。

  

歯科医院における労務管理の基本

歯科医院の労務管理は大きく4つに分けられます。採用の管理、勤務時間の管理、給与の管理、そして健康・安全の管理です。それぞれをバランスよく整えることで、スタッフが安心して働ける環境が作れます。

  

採用から雇用までの管理

採用時には明確な基準を設けることが大切です。必要なスキルや資格に加え、医院の理念に共感できる人材かどうかも重要なポイントとなります。面接では医院の方針や働き方をはっきり伝え、お互いの期待値を確認します。

採用が決まったら、給与や勤務時間、福利厚生などの労働条件が記載された労働条件通知書や雇用契約書を用意します。この段階であいまいな部分を残さないことが、後々のトラブル防止につながります。

  

勤務時間の管理

勤務時間の管理は労務管理の基本です。1日の所定労働時間、始業・終業時刻、休憩時間を明確に定めましょう。ICカードやスマートフォンを使った記録システムを導入すれば、出退勤の時間を正確に把握できます。

歯科医院では診療時間外の準備や片付けなど、見えにくい労働時間が発生しやすいので注意が必要です。休憩時間は診療で中断されないよう、スタッフ間で交代制を取り入れるなど、確実に取得できる仕組みを作ることが重要です。

  

給与と評価の管理

給与制度は分かりやすさが重要です。職種や経験年数に応じた基本給、資格手当、職務手当など、明確な基準を設けましょう。昇給や賞与の条件も具体的に示すことで、スタッフのモチベーション向上につながります。

評価制度も大切です。日々の業務内容や目標達成度を定期的に確認し、面談でフィードバックを行います。公平で透明性の高い評価システムがあれば、スタッフは安心して働くことができます。

  

健康と安全の管理

スタッフの健康管理は医院の重要な責任です。定期的な健康診断の実施はもちろん、感染リスクへの対策も欠かせません。院内の感染予防として、手袋やマスクなどの防護具の適切な使用、定期的な換気、消毒などの基本的な対策を徹底します。

また、作業環境の安全面では、X線被ばくの管理や器具の取り扱いなど、診療に関わる細やかな配慮が必要です。長時間の診療による腰痛予防など、スタッフの身体的負担を軽減するための工夫も重要です。さらに、ストレスチェックの実施や産業医との連携など、メンタルヘルスケアも欠かせません。これらの取り組みを通じて、スタッフが安心して働ける環境づくりを進めることが、医院全体の質の向上につながります。

よくあるトラブルと対策

どんなに気を付けていても、トラブルは起こり得ます。ここでは歯科医院でよく見られるトラブルと、その対策を紹介します。

  

勤務時間をめぐるトラブル

一番多いのが勤務時間に関する問題です。診療準備の時間や片付けの時間をどう扱うか、着替えの時間は労働時間に含むのかなど、判断に迷うケースが少なくありません。

基本的に、医院から指示された業務は全て労働時間として扱います。たとえば診療準備のために早めに来るよう指示があれば、その時間も労働時間です。着替えの時間も、医院指定の制服がある場合は労働時間として考えるのが無難です。

残業代の計算も要注意です。残業時間を正確に記録し、適切な残業代を支払うことはもちろん、そもそも残業を減らす工夫も大切です。

  

休暇に関するトラブル

突然の休暇申請や無断欠勤は、診療に大きな影響を与えます。特に人手の少ない歯科医院では、一人の急な休みが他のスタッフに大きな負担となります。

日頃からスタッフとよくコミュニケーションを取り、体調の変化や悩みに気づけるようにしましょう。また、急な休みにも対応できるよう、スタッフ同士でフォローし合える体制を作っておくと安心です。

産休や育休に関する問題も増えています。これらは法律で守られた権利なので、きちんとした制度を整えましょう。復帰後の働き方についても、早めに話し合っておくことが大切です。

  

ハラスメントの問題

過度な叱責や無視などのパワーハラスメント、不適切な発言や行動によるセクシャルハラスメント、さらには妊娠・出産を理由とした不利益な扱いであるマタニティハラスメントなど、様々な形態のハラスメントが問題となっています。

こうした問題への対策として、まず院内でのハラスメント防止規程を整備し、管理職への研修を定期的に実施することが大切です。また、スタッフが安心して相談できる窓口を設置し、その存在を周知することも重要です。相談を受けた際は、プライバシーに配慮しながら公平な調査を行い、必要に応じて外部の専門家とも連携して適切な対応を取ることが求められます。

特に近年では患者さんからの過度なクレームや要求であるカスタマーハラスメントも増加傾向にあり、スタッフを守るための体制づくりも欠かせません。ハラスメントのない、誰もが働きやすい職場環境の実現は、スタッフの定着率向上にも大きく貢献します。

  

まとめ

歯科医院における労務管理は、医院の持続的な発展のために極めて重要な要素です。法令遵守を基本としながら、スタッフが安心して働ける環境づくりを進めることが求められます。

就業規則の整備や労働時間管理の適正化、給与制度の設計など、具体的な施策を着実に実施することが重要です。また、院長とスタッフの日々のコミュニケーションを通じて、問題の早期発見と解決を図ることができます。

労務管理の専門家との連携体制を整えることも欠かせません。就業規則の作成や見直し、労働関係の諸問題への対応には、社会保険労務士や弁護士に相談することで、適切な判断と法的リスクの最小化が可能となります。

人材確保が困難な時代だからこそ、働きやすい職場づくりを通じて、スタッフの定着率向上を図ることが重要です。専門家のサポートを受けながら、できることから着実に取り組むことで、必ず医院の発展につながっていくはずです。

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