医療のデジタル化が加速する中、歯科医院での支払い方法も大きな転換期を迎えています。患者さんの生活様式の変化に伴い、現金を持ち歩かない人が増加し、支払い方法へのニーズも多様化しています。特に開業時には新規の患者さんを獲得していく必要があり、柔軟な支払い方法の提供は患者さんが医療機関を選択する際の重要な要素となっています。

また、未収金にかかわる管理業務など、歯科医院の経営課題も山積みです。このような背景から、新たな決済手段としてあと払いシステムが注目を集めています。本記事では、あと払いシステム導入のメリットや実践的な運用方法まで、詳しく解説していきます。

  

歯科医院における支払いの課題

歯科医院の経営において、会計時の待ち時間や患者さんの支払い方法の多様化など、支払いに関する問題が課題となっています。

  

未収金と督促業務

歯科医院においては、まれに未収金が発生するケースがあります。 特にインプラントなどの自由診療では、高額な治療費が発生するケースも多く、患者さんの経済的負担が大きくなる傾向にあります。

会計時に現金の用意がなかった場合など、次回診療時に支払いというケースもあることでしょう。その場合、次回までの未収金の管理や必要があれば督促業務が発生します。

高額な治療で未収金が発生した場合、督促業務には相当の時間と労力を要し、特に長期化した未収金の回収は非常に困難となります。未収金の存在は医院の資金繰りに影響を与えるだけでなく、督促業務自体がスタッフにとって精神的な負担も含めた大きな業務負担となっています。また、本来の医療サービスに注力すべき時間が、督促業務によって圧迫されている状況と言えます。

  

会計業務による人件費の圧迫

日々の会計業務は、想像以上の時間と労力を必要としています。現金管理、レジ締め、カード決済の確認、未収金の管理など、業務は多岐にわたります。予約が多い時間帯では、来院受付と会計待ちの患者さんが被るケースがあり、スタッフの負担が増大します。これらの業務負担は、本来注力すべき患者さんへのケアや医療サービスの質の向上を妨げる要因となっています。

  

患者さんニーズの多様化への対応

現代の患者さんの歯科医院へ の期待は実に多様です。キャッシュレスへの対応や、想定外な治療による急な出費への対応、継続的な通院が考えられる場合はいくつかの支払い方法から選択したいという要望など、 様々なケースが存在します。また、仕事の合間を縫って通院する患者さんにとって、長時間の待ち時間は大きな負担となっています。特に会計時の待ち時間は、診療後の疲労も重なり、患者さんのストレスとなりやすい状況です。

さらに、家族の治療費をまとめて管理したい方や、医療費控除の記録を効率的に行いたいといったニーズも増加しています。これらの多様なニーズと待ち時間の課題に個別に対応することは、医院側の業務負担をさらに増加させる結果となっています。

  

歯科医院での主な支払い の種類と特徴

それぞれの支払い 方法について、患者さんと医院双方の実際の使用場面での利便性や運用面から特徴を解説します。

  

クレジットカード払い

多くの患者さんが日常的に使い慣れた決済方法で、手続きはとてもシンプルです。その場で分割回数を選べ、スマートフォンで支払い履歴も確認できるため、利用しやすい点が特徴です。 医院側は、一般的な決済手段のため他の方法と比べてスムーズに導入が行えます。 しかし、診察後から会計額の確定までに患者さんの待ち時間が発生し、手続きにも一定の時間を要します。

  

医療ローン・デンタルローン

患者さんは長期の分割払いが可能で、計画的な支払いができます。特にデンタルローンは歯科治療に特化しているため、審査も比較的通りやすい特徴があります。ただし、申込手続きは複雑で、審査に時間がかかるため急な治療には使いづらく、金利負担も発生します。医院では申込書類の準備や説明に時間を要し、患者さんの待ち時間も長くなりがちです。ただし、金融機関が審査・与信を行うため未収金のリスクはなく、確実な入金が見込めます。一度契約が完了すれば、以降の運用は比較的スムーズに進められます。

  

会計レスあと払いシステム

今注目を集めている新しい決済方法です。患者さんは事前にスマートフォンから登録するだけで、診療後の会計待ちが不要となります。支払いは翌日、登録したクレジットカードから自動的に決済される仕組みです。診療後は会計窓口での支払いが不要で 、そのまま帰宅できるのが特徴です。訪問診療やお子さんだけで通わせる場合 にも便利で、家族分で の利用登録も可能です。さらに、支払い履歴は簡単に確認できるため、医療費の管理も容易に行えます。

●会計あと払いについて、詳しくはこちら

  

会計レスあと払いシステム導入のメリット

未収金管理や会計業務の負担、多様化する患者さんニーズなど、歯科医院が抱える様々な課題に対して、会計レスあと払いシステムは効果的な解決策となります。ここでは、導入によってもたらされる具体的なメリットについて解説していきます。

  

業務効率化と人件費削減

あと払いシステムの導入により、会計業務を大幅に効率化することが可能です。これにより日々の現金管理やレジ締めの手間が軽減され、スタッフの残業時間の削減にもつながっています。このように業務負担が軽減されることで、本来の医療サービスにより多くの時間を充てられるようになり、医療の質の向上が期待できます。実際の導入事例では、会計業務にかかる時間が従来の半分以下になったという報告もあります。

  

患者さん満足度の向上

会計待ち時間の短縮は、患者さんの満足度向上に直結します。診療後はすぐに帰宅できるため、仕事の合間を縫って通院される方にも好評です。また、支払い方法の選択肢が増えることで、患者さんの経済状況に応じた柔軟な対応が可能となります。特に高額な治療では、分割払いやローンなどの選択肢を提示することで、治療の決断がしやすくなります。

  

経営指標の改善効果

あと払いシステムの導入は、様々な経営指標の改善をもたらします。その中でも、未収金の削減効果は特に顕著で、導入医院の多くが大幅な削減を実現しています。また、会計業務の効率化による人件費の適正化や、患者さん満足度の向上による来院数の増加も期待できます。さらに、キャッシュレス決済の増加により、現金管理に関するリスクも軽減され、経営の安定性向上に貢献します。

  

スムーズな導入と運用のポイント

あと払いシステムの導入は、医院の経営改善への重要なステップとなります。しかし、その効果を最大限に引き出すには、適切な準備と運用が欠かせません。

  

システム選びの重要ポイント

あと払いシステムの選択では、まず医院の規模や患者層、診療内容に合わせた検討が必要です。手数料率は重要な判断材料ですが、それだけでなく、レセプトコンピュータとの連携性も重要な要素となります。また、カスタマーサポートの充実度や、トラブル時の対応体制なども確認すべきポイントです。特に重視したいのが、実際の運用時の使いやすさです。スタッフの教育負担が少なく、直感的に操作できるシステムを選ぶことで、スムーズな導入が可能となります。

  

導入準備と体制づくり

システム導入に先立ち、院内での運用ルールの整備が重要です。受付から会計まで、どの段階であと払いの案内を行うか、どのような患者さんに推奨するかなど、具体的な運用フローを決めておく必要があります。また、スタッフ全員が新しいシステムを理解し、適切に説明できるよう、十分な研修時間を確保することも大切です。特に、高齢の患者さんへの配慮や、緊急時の対応などについては、具体的な事例を交えながら教育を行うことで、より実践的な対応が可能となります。

  

効果的な運用方法

導入後は、患者さんへの丁寧な説明と、適切な運用管理が重要です。あと払いシステムのメリットを分かりやすく説明し、患者さんの不安を解消することで、スムーズな利用につながります。また、定期的な利用状況の確認や、問題点の洗い出しを行うことで、より効果的な運用が可能となります。特に導入初期は、必要に応じて運用方法の改善を図ることが望ましいでしょう。

  

まとめ

あと払いシステムの導入は、歯科医院が抱える決済に関する様々な課題を解決する有効な手段となります。未収金の削減や業務効率の改善だけでなく、患者さんの利便性向上にもつながり、医院の競争力強化にも効果を発揮します。導入に際しては、医院の特性や患者層に合わせた適切なシステムを選択し、十分な準備と計画的な運用を心がけることが重要です。

デジタル化が進む現代において、あと払いシステムの導入は、もはや選択肢の一つではなく、必要不可欠な経営戦略となりつつあります。患者さんのニーズに応え、スタッフの業務効率を高め、医院の経営基盤を強化する。あと払いシステムは、そんな多面的な効果をもたらす重要なツールとして、今後ますます注目を集めていくことでしょう。

●会計あと払いについて、詳しくはこちら