導入事例:歯科レセコンの活用のポイントとは
最近よく耳にするDX。国や関連各省庁では実現のためのチームを設置し、医療業界においても「医療DX」としてDX化を推進しています。そしてこの取り組みが加速化される方向性にある中で、何から取り組んだらよいのかと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
医療DXというと大掛かりで何か特別なことをイメージしがちですが、まずは包括的に院内業務を管理できるレセコンを活用することが、その第一歩となります。しかしレセコンは多くの機能を搭載しており、医療DXを進めるにあたり、それら機能の活用イメージが具体的にできないのも実状です。
そこで本コラムでは実際に導入運用されている医療法人社団青葉済生会 セントマークス歯科の坂梨院長(以下「坂梨院長」)に伺ったお話の内容をもとに、レセコンの活用ポイントや業務フローの最適化によってもたらされる変化について解説します。
現状の業務課題の整理と活用ポイント
開業場所や院内環境、経営状況などは歯科医院によってさまざま。そのためレセコンを上手く活用するには、事前に現状の課題などを明確にしておくことが大切です。ここでは坂梨院長が医院で実際に直面していた課題として挙げた例をご紹介します。
まず坂梨院長が課題として挙げたのが受付周りの業務についてです。
・新規患者の1号用紙のカルテ登録に保険証を確認しながらの手入力
・問診票や治療に関するアンケート用紙を紙カルテと共に管理
・予約情報を紙製のアポイント帳で管理
さらに、紙のアポイント帳での管理については、具体的に以下のようなことについても課題として挙げています。
● 次回の予約日時の確認をするために、受付やチェアサイドなどで紙製のアポイント帳を持ち歩き、次回の予約日時の確認に時間を要していた
● 紙のアポイント帳と診察券に誤った予約日時を記載し、管理してしまうことがあった
など、手書き運用をしていたことで起こる不都合や人為的なミスについて悩んでいたそうです。
また紙類の運用で行っていた紙カルテとレセプトについては、特に危惧している点として以下の点を挙げています。
● 閲覧後にホルダーへ返却してバラバラになった紙カルテの履歴探索に苦慮
● 限られたスペースの中で増えつづける紙カルテの管理コスト
● 請求前に行う紙レセプトでのチェック作業
特にレセプトは電子請求となりだいぶ経つものの、ミスの少ない提出を行うための確認作業の労力が大きかったそうです。
最後に認識しておくポイントとして、挙げているのが運用についてです。レセコンを導入したとしても、どうしても残るリスクが存在することを指摘されています。例えば、予約管理をデジタル化して管理するとします。この場合、患者さんから電話による予約変更があると、人の手で変更作業を行う必要があります。そのため、もし変更作業でミスが起こると、予約日時の勘違いが発生します。
坂梨院長は医院と患者さんとの間で行き違いが起こる可能性を見込んだ運用を行っているそうです。こういったリスクについては、最終的に運用でカバーすることを見越した体制を構築することが必要であるといえるでしょう。
レセコンの機能・サービスと活用方法
それぞれの業務負荷は小さくとも、積み重なることで院内全体の業務負荷となり、スタッフのみならず患者さんへ影響を及ぼしてしまう可能性が少なからずあることでしょう。ここからは各課題と向き合った坂梨院長の医院では、どのようにレセコンを運用しているのか、具体的な機能やサービスの活用方法をご紹介します。
受付業務周りの業務課題に
● 新規患者の1号用紙のカルテ登録は保険証読み込み専用のスキャナーを活用
保険証に記載のない住所や連絡先のみ、手入力を行っている
問診票や治療に関するアンケートもスキャナーで取り込んで、保存管理を行っている
● 予約管理は紙製のアポイント帳からデジタルで管理
処置内容や新患・急患など、状況に応じて色分けして患者さんの管理を行っている
リアルタイムで表示される来院済みの患者確認をスタッフとインカムで二重チェックを行っている
診療室周りの業務課題に
● カルテ作成は、入力作業をできるだけ少なくするよう、事前に登録
あらかじめ処置内容や使用する薬剤、材料などの登録を行い、個別に内容入力を行う作業を極力少なく済むようにしている
● リアルタイムで口腔情報や補綴状況などの管理サービスを活用
ボタン1つで簡単に可視化されるため、治療前の確認作業が効率的に行えている
端的に把握できるため電話でのお問い合わせに、待たせることなく対応が行えている
● 紙カルテから電子カルテでの運用に変更
チェアサイドでの閲覧や入力にiPadを活用している
カルテを事前準備する必要がなく、紙カルテのように閲覧できる事はもちろんのこと、確認したい処置内容(履歴)を検索し、スピーディーに確認できる。また、各種検査結果の入力にも非常に便利
● レセコンと他社製エックス線画像ソフトとリンク
口腔ケアの動機づけと維持のために、デジタルエックス線画像と口腔内カメラで撮影した拡大画像を患者さんに見てもらっている
マネジメント周りの業務に
● 紙感覚でレセプトチェックが行えるビューワを活用
提出前にビューワ機能を利用し、歯科医師自身が効率的に最終チェックを行い、ミスの少ないレセプトの提出に役立てている
● 患者さんとのコミュニケーションツールに患者情報の管理サービスを活用
このサービスを利用し、診療時に患者さんからヒアリングした内容や治療内容以外の受付で購入した物品の履歴管理、同居家族の情報などを記録・共有、管理に役立てている
サービスの活用により生まれる変化とは
さてここまでは課題の抽出とレセコンのサービスをどのように活用しているのかをご紹介してきましたが、結果的にそれらのサービスを活用することで、坂梨院長の医院ではどのような変化が生まれたのでしょうか。ここでは実際に導入後に起こった坂梨院長が体感しているその効果や影響についてご紹介します。
まず初めに挙げたのは、受付でのスキャナーの活用や予約情報をデジタル管理にしたことで生まれた変化についてです。常に患者さんが歯科医院に対して抱く不満ランキングで上位にランクインする「待たされる」ことへの適切な対応に大きく貢献しているそうです。
待ち時間の減少はもちろんのこと、少々診療までに時間を要する場面でも、来院状況が院内で容易に共有できるようになり、患者さんに適切な対応が行えるようになったそうです。さらに特筆すべき点として、デジタル化し管理している予約情報と連動するリライト対応の診察券を導入したことで、手書きの手間が省かれ、スピーディーかつミスのない予約ができるようになったと実感しているそうです。
また坂梨院長に伺った内容に加え、直近では資格情報等(加入している医療保険や自己負担限度額等)をオンラインで確認できる「オンライン資格確認」の導入が義務化されたことも今後、変化を生んでいくことでしょう。
これまでのレセコンのサービスと組み合わせて活用すれば、受付業務の効率アップはもちろんのこと、患者さんの待ち時間の減少効果が期待できるのではないでしょうか。
次にエックス線画像用ソフトとレセコン(患者説明用のツール)をリンクしたことで、患者さんへの口腔内の説明が有効的に行えるようになった点を挙げています。患者さんが置かれている口腔内の現状と今後の治療方針を伝えやすくなり、口腔ケアの動機づけとその維持にも役立っているそうです。
最後に事務作業や運営の点ついては、レセプトを事前にチェックするためのビューワサービスを活用することで、請求のミスが少なくなり経営的に良い影響が出ているそうです。また患者情報の管理サービスは、患者さんとの円滑なコミュニケーションを下支えするサポートツールとして機能しており、接遇向上になっているそうです。
こうしてレセコンの導入で生まれた変化、その影響などの話を伺うと、あらためて現状の課題認識の重要性を再認識するところです。課題と向かい合い、レセコンの導入と運用によって生まれた変化や効果、影響を普段から注視し、見直しを行いながら運用していくことが重要だといえるのではないでしょうか。
MIC WEB SERVICEとは
では、ここでは坂梨院長の医院で2013年より導入されている「MIC WEB SERVICE」について触れてみたいと思います。さまざまなサービスを活用し、結果的に変化を生み出してきたMICのレセコンとはどういったものなのか、少しご紹介します。
「MIC WEB SERVICE」がこれまでのソフトと大きく違うのは、約80余りのサービスの中から医院に必要な機能のサービスだけを申し込み、利用ができるサブスクリプションモデル(月額課金)であるということです。
必要に応じて、各サービス(各機能)の追加や削除が容易に行えます。費用は利用するサービスごとに課⾦されるため、これまでのオールインワンモデルと異なり、無駄なコストを抑えることができます。このように機能面と費用面で医院ごとにフィットした運用を可能した点が大きな特長です。
また、MICでは弊社製品をはじめて導入する方向けのエントリーモデルもご用意しています。こちらは費用を抑えつつも歯科医院に必要な基本的な機能をワンパッケージにして提供しています。さらにサブスクリプションのサービスをオプション追加できる特長を持ち合わせており、業界に向けた新しいカタチの提案ともいえるもうひとつの旗艦モデルです。
まとめ レセコンの活用にある医療DXの本質
どのメーカーのレセコンでもたくさんの機能があり、サポート範囲も多岐に渡ります。しかしその一方でその機能をフルに活用できていないという話も多く聞きます。
患者さんのニーズも細分化し、ますます各歯科医院がかかえる課題や運営状況は千差万別となっているのではないでしょうか。そのような状況において、どのようなレセコンを導入したとしても、すべてに対応することは困難な面がどうしても発生してしまうことも事実です。
坂梨院長の話からは、医療DXをすすめるうえでのヒントがたくさんありました。何が課題なのかを事前に明確にし、優先順位を考えながらレセコンをうまく活用してひとつひとつ改善していくことが、医療DXのはじめの一歩であり、その取り組みの積み重ねが医院の変革に繋がっていくことになります。
医療DXという言葉が先行し、これが目的となってしまっては本末転倒です。今ある課題に対してITの技術を上手く活用し、運営の改善をしていきませんか。MICではそのためのレセコンをご提案いたします。ぜひ、お気軽にお問い合せください。
※出典元:本コラムは『日本歯科評論/別冊2020(株式会社ヒョーロン・パブリッシャーズ)』に掲載した記事を再構成したものなります。
取材にご協力いただいた医院紹介
医療法人社団青葉済生会 セントマークス歯科さま
2006年に東京都杉並区は浜田山に開業。インフォームドコンセントを重視・徹底し、『できるだけ削らない』を目標に新しい治療を積極的に取り入れられています。来院される皆様のクオリティオブライフの向上に貢献することを使命に、安全で安心できる歯科医療を提供されています。