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職業安定法の改正内容を解説。歯科医院への影響とは?

職業安定法の改正内容を解説。歯科医院への影響とは?

近年、転職市場や副業の解禁などの話題をよく見かけるようになりました。企業はさまざまな手段を使い優秀な人材を確保しようとしています。昨今では国からの働きかけもあり、賃金アップをする企業のトピックが連日報道されています。これにより人材はより待遇の良い企業へと流れていくことが予想され、ますます求人市場は活性化されていくことでしょう。

そして求人市場が活性する中で、新たな求人サービスが登場していることから、実態と法律の辻褄を合わせる必要があるということで職業安定法が改正されました。

もちろんこれは、歯科医院の求人活動においても同様に適用されるものです。これまでも人手不足は歯科業界においても経営課題として話題の上位に挙がるトピックでした。人材紹介への求人申し込みやウェブサイト等で従業員の募集を行うなど、求人活動に苦心する経験をした(またはしている)歯科医院は多いのではないでしょうか。

今回は2022年10月1日に施行された職業安定法が歯科医院の求人活動に及ぼす影響について、ポイントをご紹介します。ぜひ、ご確認いただき、今後の対応へのご参考になさってください。

スタッフを募集する際の改正後のポイントとは?

改正された職業安定法には、インターネット上で求人情報を提供するメディアなどを対象とした規制強化などが盛り込まれています。具体的な改正のポイントは、以下のとおりです。

  

1「募集情報等提供」の範囲が拡大
2 特定募集情報等提供事業者の届出制を創設
3 求人情報の的確な表示を義務付け
4 個人情報の収集目的の明示を義務付け

  

ポイントは4つになりますが、本コラムでは対象としている歯科医院に関わる主に「3」「4」のポイントをメインに解説していきます。

※「1」と「2」についても詳しく知りたい方は厚生労働省のサイトも併せてご参照ください。
厚生労働省 「令和4年職業安定法の改正について

スタッフを募集する際の改正後のポイントとは?

こちらは求人等に関し、「1:求人情報」「2:求職者情報」「3:求人企業に関する情報」「4:自社に関する情報」「5:事業の実績に関する情報」といったこれらのすべてにおいて、的確な表示を事業者に義務付けるものです。

  

そして求人を行う事業者は虚偽の表示・誤解を生じさせる表示をしてはならないとされており、求人情報を正確かつ最新の内容に保つために以下のよう措置が求められています。

  

対象となる手段

さまざまな広告・連絡手段が的確な表示義務の対象となります。
新聞・雑誌・その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出・頒布、書面、ファックス、ウェブサイト、電子メール・メッセージアプリ・アプリ等、放送(テレビ・ラジオ等)、オンデマンド放送等

  

正確かつ最新の内容に保つ義務

以下の措置を講じるなど、求人情報を正確・最新の内容に保つ必要があります。
●募集を終了・内容変更したら、速やかに求人情報の提供を終了・内容を変更する
●求人メディア等の募集情報等提供事業者を活用している場合は、募集の終了や内容変更を反映するよう速やかに依頼する
●いつの時点の求人情報か明らかにする
●求人メディア等の募集情報等提供事業者から、求人情報の訂正・変更を依頼された場合には、速やかに対応する

  

自社に関する情報

自社に関する情報についても、以下のような表示をしないようにする必要があります。
「×」なケース
・上場企業でないにも関わらず、上場企業であると表示する
・実際の業種と異なる業種を記載する

  

虚偽の表示の禁止

以下のような場合は虚偽の表示に該当する場合がありますので、注意が必要です。
「×」なケース
・実際に募集を行う企業と別の企業の名前で求人を掲載する
・「正社員」と謳いながら、実際には「アルバイト・パート」の求人であった
・実際の賃金よりも高額な賃金の求人を掲載する

  

誤解を生じさせる表示をしないための注意点

虚偽の表示ではなくとも、一般的・客観的に誤解を生じさせるような表示は、「誤解を生じさせる表示」に該当となりますので注意が必要です。また厚生労働省の資料によると、求人情報の提供の段階でも労働条件として明示すべき項目(※)をできる限り含めた形で提供することが望ましいといえるでしょう。

  

そこで以下に最低限明示しなければならない労働条件と今回の改正での留意点として示されている例示を併せてご紹介します。

  

※これまでどおり労働条件の明示は、はじめて応募者と接触する時点までに求人等に関する情報の的確な表示とは別に行う必要があります。

  

留意点として示されている例示
参考URL https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000983825.pdf

  

1 業務内容

職種や業種について、実際の業務の内容と著しく乖離する名称を用いてはいけません。
「×」なケース
・営業職中心の業務を「事務職」と表示する
・契約社員の募集を「試用期間中は契約社員」など、正社員の募集であるかのように表示する
・フリーランス(委託)の募集と雇用契約の募集を混同する

  

2 賃金

固定残業代を採用する場合に、基礎となる労働時間数等を明示せず、基本給に含めて表示してはいけません。
「×」なケース
・【月給】32万円

「○」なケース
・【基本給】25万円【固定残業代】7万円
※時間外労働の有無に関わらず、15時間分支給。15時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給します。

  

モデル収入例を、必ず支払われる基本給のように表示してはいけません。
「×」なケース
・【給与】400 万円~【モデル給与】1000万円~
(社内で特に給与が高い労働者の給与を全ての労働者の給与であるかのように例示)

「○」なケース
・【給与】400万円~600万円
・【給与】400万円~600万円/【モデル給与】555万円(同職種社員の給与の平均を例示)

  

3 募集者の氏名または名称

優れた実績を持つグループ会社の情報を大きく記載する等、求人企業とグループ企業が混同されるような表示をしてはいけません。
「×」なケース
・A社のグループ会社B社の求人を、「A社は高度なITエンジニアのスキルを持った方を必要としています。」と表示

  

また当初明示した労働条件が変更される場合は、可能な限り速やかに変更内容について明示することが必要です。ぜひ、ご紹介したポイントを活かしてスムーズな採用活動にお役立てください。

個人情報収集目的の明示義務

こちらは事業者が求職者の個人情報を収集する際、求職者等が一般的かつ合理的に想定できる程度で具体的にその個人情報を収集・使用・保管する業務の目的を、ウェブサイトに掲載するなどして明らかにしなくてはならないというものです。

  

厚生労働省の資料では、その一例として以下が示されています。
「×」なケース
・「募集情報等提供のために使用します」とのみ表示

「○」なケース
・「求人情報に関するメールマガジンを配信するために利用します」と表示
・「会員登録時に入力いただいた情報を、当社の会員企業に提供します」と表示

  

また今回、改正され義務付けとなった「目的の明示」以外にも業務の目的の達成に必要な範囲内で「求職者の個人情報を収集・使用・保管の義務」や「業務上知り得た人の秘密の漏洩禁止」、「求職者の個人情報の第三者への提供禁止」などは職業安定法の個人情報に関する規定の対象となりますので留意が必要です。

まとめ:安心・安全にスタッフの募集を行うために

職業安定法の改正は求職者が安心して求職活動を行うことができる環境の整備と、マッチング機能の質の向上をさせることが目的とされています。求人をすでに行っている、もしくはこれから行う計画があるという歯科医院においては、この改正職業安定法のルールに従い、いまいちど募集に関わる情報や依頼内容の見直しを行ってみてはいかがでしょうか。

  

採用時に雇用主から労働者へ交付される「労働条件通知書」

さて、ここまでは職業安定法の改正に伴うルールのポイントについて解説してきましたが、最後に「労働条件通知書」についてご紹介します。スタッフを採用する際には、「労働条件通知書」等で改めて書面にて労働条件を明示することが、労働基準法に定められていることはご存知でしょうか。

労働条件通知書

  

MICでは厚生労働省から提示されている書式をベースに、汎用的にご利用いただけるよう作成した労働条件通知書の書式ファイルをユーザーさま向けポータルサイトの専用コーナーにてご提供しております。他にも医院内で利用頻度の高い休日届や早退届など労務管理に必要な各種書類の書式もご用意がありますので、ぜひご活用ください。

  

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