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歯科クリニック開業までのスケジュール、シミュレーションできていますか?

歯科クリニック開業までのスケジュール、シミュレーションできていますか?

歯科クリニックを開業するまでには、物件の契約や工事、役所関連の手続きなどさまざまなプロセスを経る必要があります。いずれも思い立ってすぐ準備できるものではないだけに、開業前にはスケジュールをしっかりと立て、計画的に進めていく必要があります。

  

※歯科開業の全体像は「歯科開業に必要な情報を総まとめ!開業のメリット、資金調達、スケジュールから成功のコツまで」をあわせてご覧ください。

歯科クリニック開業までのスケジュール

歯科クリニックを開業するためには、どのくらい前から準備を始める必要があるのでしょうか。検討段階から実際に起業するまでのスケジュールを見てみましょう。

※それぞれの段階で必要な期間はテナントなのか、居抜き・継承なのか、新築なのかなどの開業形態によっても大きく変わりますが、ここでは平均的なテナントからの開業を例にして紹介しています。クリニックを新築する場合は、建物の工事に6〜8ヶ月程度の期間が追加でかかります。反対に、居抜きや継承の場合は簡単な内装の手直しと機器のチェックをすませば開業できるため、準備期間が大幅に短縮されます。

  

1) 構想段階:12〜24ヶ月前

どのようなクリニックにするかを構想する段階です。広さや立地、内装の雰囲気のほか、クリニックのコンセプトや資金計画(自己資金と融資の割合など)をできるだけ具体的にイメージしておくと、以降のステップに進みやすくなります。

【必要な準備】
・クリニックのコンセプト
・開業するエリアの選定
・融資のシミュレーション
・開業コンサルや会計事務所、ディーラーなど開業支援パートナーへ相談

  

2) 計画段階:10ヶ月前

具体的に開業計画を立て始める段階です。物件の選定や内装の見積り、設備の見積りなどを取得し、具体的な事業計画に落とし込んでいきます。具体的な融資可能額を銀行に相談したり、歯科医師会や管轄の厚生局へ相談したりするのもこの段階です。また、開業に当たってはそのコンセプトや立地などが重要になるため、開業コンサルティングを利用するケースも多いようです。その場合もこの計画段階で相談しておくといいでしょう。

【必要な準備】
・物件の選定、内装の見積り
・医療機器の見積り
・事業計画書の作成
・融資可能額の確認
・歯科医師会や管轄の厚生局へ相談

  

3) 開業準備:6ヶ月前

本格的な開業準備に乗り出す段階です。ユニットやレセコン、レントゲンなど医療設備の決定、物件・内装業者の決定、融資を受ける金融機関の決定などを行います。決めごとが多く次第に忙しくなり始めますが、具体的に物事が進んでいることを実感できるのもこの段階です。

【必要な準備】
・開業エリア、物件の決定
・内装業者の決定
・大型医療機器の決定
・融資を受ける金融機関の決定

  

4) 物件工事:4ヶ月前

物件を契約し、実際に内装工事が始まる段階です。ここから先は事業計画の修正が難しくなるため注意が必要です。テナントから開業する場合はおよそ4ヶ月前から始めるのが一般的ですが、クリニックを新築する場合はここから1年程度かかる場合もあります。

【必要な準備】
・内装の決定
・物件工事開始
・最終事業計画書の確定

  

5) 開業前準備:3ヶ月前

備品や消耗材料の契約、クリニックのスタッフの採用、ホームページ、内覧会、役所に提出する書類など、開業にまつわるさまざまな準備を行います。また内装工事が完了し、ユニットやレントゲンなどの大型機器の取り付けを行うのもこの時期です。決めごとが多く煩雑になりやすいため、しっかりと計画的に準備していきましょう。近くにある歯科技工所を探し、つながりを作っておくのも重要な開業準備です。

【必要な準備】
・備品、消耗材料の契約
・スタッフの採用準備
・ホームページ準備
・内覧会準備
・大型機器の設置

  

6) 開業直前準備:1ヶ月前

内装工事や機器導入などをすませ、直前準備に入る段階です。医療スタッフの決定や研修のほか、保健所の検査、歯科医師会への入会、役所への届出書類申請などを行います。また、地域の方へ歯科医院のオープンを知らせる内覧会を行うのもこの時期です。

【必要な準備】
・スタッフの決定、研修
・内覧会の開催
・保健所の検査
・歯科医師会への入会
・役所への届出書類申請

  

7) オープン初期段階

いよいよオープンですが、最初の2ヶ月は診療報酬が入ってこないため用意していた運転資金で経費や人件費を賄うことになります。そのため最初は最低限のスタッフでスタートし、収支から人件費を払えるようになった段階であらためて求人を行うのもひとつの方法です。

歯科クリニック開設時に必要な届出

歯科医院の開業に当たっては、事前に保健所や社会保険事務所、また税務署などにさまざまな書類の届け出が必要になります。なかには提出期限が指定されているものもあるので、忘れずにチェックしておきましょう。

  

クリニック開設に当たり必要な申請書類

・診療所開設届
   提出先:保健所
   提出期限:開設後10日以内
・診療所エックス線装置設置届
   提出先:保健所
   提出期限:開設後10日以内
・保険医登録申請書
   提出先:社会保険事務所
   提出期限:開業前に申請
・保険医療機関指定申請書
   提出先:社会保険事務所
   提出期限:開業前に申請
・各種医療機関指定申請書
   提出先:福祉事務所
   提出期限:随時
・労災保険指定診療所申請書
   提出先:労働基準局
   提出期限:開業前に申請

  

税務関連で届出が必要な書類

・個人事業の開業届出書
   提出先:税務署
   提出期限:開設から1ヶ月以内
・所得税の青色承認申請書
   提出先:税務署
   提出期限:開設から2ヶ月以内
・給与支払事務所の開設届出書
   提出先:税務署
   提出期限:開設から1ヶ月以内
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請
   提出先:税務署
   提出期限:随時
・青色専従者給与に関する届出書
   提出先:税務署
   提出期限:その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業から2ヶ月以内)
・個人事業開始申告書
   提出先:都道府県税事務署
   提出期限:開業から1ヶ月以内(※都道府県によって異なります)

スケジュール計画で見逃しがちなポイント

歯科クリニック開業までのスケジュールを計画するうえでは、以下の2つのポイントに気をつけることが重要です。

  

開業費用は多めに見積もっておく

歯科医院の開業には多額の資金が必要なため、できるだけ節約したいと考える方も多いかもしれません。もちろん、経営者として無駄な経費を削減する視点は必要ですが、開業のための予算は多めに見積もっておくことが重要です。予算に余裕があれば多少スケジュールがずれても許容できるほか、予定外の出費にも対応できます。また、診療報酬はレセプト請求の関係で、申請から入金までに2ヶ月のズレが生じます。そのため、開業から2ヶ月程度はほぼ無収入となることにも注意が必要です。

※開業費用について詳しくは「歯科開業に必要な資金はいくら?独立前に知っておくべきお金の話」もご覧ください。

  

開業後の設備投資も含めて計画を立てる

スケジュールを立てる際は、大まかでもいいので開業後のことまで含めて計画することをおすすめします。ユニットやレントゲンなど、歯科医院の医療機器の耐用年数はおよそ6〜7年といわれており、それを過ぎると補修費用がかさむようになります。また、そのころになるとクリニック自体の改装も考える時期になるため、さらに費用がかさむことになります。これらの大きな出費とそのタイミングを計画しておくことが安定した経営にもつながります。

  

開業エリアや物件は常にアンテナを張っておく

開業までのスケジュールの中で最も時間を取られるのは、やはり構想段階です。特に開業エリアや物件の選定は一番骨が折れる部分で、自身の診療所のコンセプトや治療方針にも関わる重要なポイントです。そのため、開業エリアや物件については開業準備を始めてから探すのではなく、勤務医のうちから常に立地や物件情報にアンテナを張ってイメージを掴むことが重要です。

8月の開業を避けるべき理由

歯科医院はそれほど季節に左右される業種ではありませんが、それでも8月の開業は避けるべきといわれています。8月はお盆休みや夏休みで外出の機会が多くなるため、必然的に歯科医院に通う優先度が下がり、歯科医院にとっては集患しにくい時期になります。また、お盆休みは歯科医院も休業することが多いため、開業してすぐに長期休暇を迎えることになるのも悩ましい部分です。

もちろん、8月のお盆休みにあえて営業を続けることで集患につなげるという考え方もあります。ただその場合は、スタッフの理解をしっかりと得ておかないと「お盆なのに休めない」と不満のタネになり、士気に大きく影響する可能性があります。

同じ理由から、正月休み前の12月や、GW前も開業には適していないといわれています。具体的に開業時期を検討する際は、こうした時期を外して調整することをおすすめします。

  

早め早めの計画が成功につながる

歯科クリニックを開業するまでには多岐にわたる準備が必要です。成功のためにも、早め早めに計画を練り、無理のないスケジュールを組むことが重要です。

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