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歯科医院でのカスハラとは?具体的な実態から対策まで詳しく解説(後編)

歯科医院でのカスハラとは?具体的な実態から対策まで詳しく解説(後編)

近年、様々な業界でカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)が問題視されています。歯科医院もその例外ではありません。本記事では、歯科医院特有のカスハラの実態と対策について、詳しく解説していきます。

事前のカスハラ対策

カスハラの発生を未然に防ぐためには、事前の対策が不可欠です。適切な予防策を講じることで、カスハラのリスクを大幅に軽減し、安全で快適な診療環境を維持できます。

  

スタッフ教育とマニュアルの整備

カスハラ対策の基本は、スタッフ教育とマニュアルの整備です。定期的な研修を通じて、カスハラの定義や具体例、適切な対応方法をスタッフ全員が理解し、共有することが重要です。また、カスハラ対応マニュアルを作成し、具体的な対応手順を明確化することで、スタッフが自信を持って対応できる環境を整えることができます。

  

コミュニケーションスキルの向上

カスハラの多くは、コミュニケーションの齟齬(そご)から生じることが多いため、スタッフのコミュニケーションスキル向上は非常に重要です。患者さんの話をしっかりと傾聴し、共感的な態度で接することで、多くのトラブルを未然に防ぐことができます。また、医療用語をわかりやすく説明する能力や、患者さんの不安を和らげるコミュニケーション技術の習得も有効です。

患者さんとのコミュニケーションについて詳しくは、以下の記事をご参照ください。
患者さんと自然な会話が弾むコミュニケーションの基礎を作る!

  

ITの活用

ITの活用は、カスハラ対策においても効果的です。適切なITツールの導入により、患者さんとのコミュニケーションを円滑化し、トラブルの発生リスクを軽減できます。

例えば、患者情報管理システムを使用することで、診療履歴や患者さんの要望を記録・共有し、きめ細かな対応が可能になります。オンライン予約システムは、予約の混乱や待ち時間に関するトラブルを減らすのに役立ちます。

また、インフォームドコンセントツールを活用すれば、診療内容や費用をわかりやすく説明でき、患者さんの理解を深めることができます。

予約システムについて詳しくは、以下の記事をご参照ください。
歯科医院に欠かせない予約システム、具体的な活用方法と導入時のポイントを解説

  

患者さんへの適切な情報提供と同意取得

適切な情報提供と同意取得は、カスハラ予防の鍵となります。診療内容や費用、予想される結果や副作用などについて、事前に詳細な説明を行い、患者さんの理解と同意を得ることが重要です。特に、保険診療と自費診療の区別や、追加で発生する可能性のある費用については、明確な説明が必要です。また、説明内容を文書化し、患者さんの署名を得ることで、後のトラブルを防ぐことができます。

カスハラ発生後の具体的な対応

カスハラが実際に発生した際の適切な対応も、事前の準備と同様に重要です。迅速かつ効果的な対応は、状況の悪化を防ぎ、患者さんとの関係修復の機会を生み出します。

  

初期対応の重要性

カスハラ発生時の初期対応は非常に重要です。まず、冷静さを保ち、患者さんの訴えをしっかりと傾聴することが大切です。感情的にならず、共感的な態度で接することで、状況のエスカレートを防ぐことができます。また、可能な限りプライバシーに配慮し、他の患者さんの前でのやり取りは避けるべきです。

  

責任者への報告・対応依頼の基準と方法

初期対応で解決できない場合は、問題や課題を責任者や専門家に引き上げて対応を求める必要があります。これは、より経験や権限のある人に判断を仰ぐことで、適切な解決策を見出すためです。
上位者への報告が必要となる基準としては、患者さんの要求が医院の方針や法律に反する場合、スタッフの安全が脅かされる場合、他の患者さんへの影響が大きい場合などが挙げられます。具体的な方法としては、現場責任者や院長への報告、必要に応じて警察や弁護士への相談などがあります。

  

記録の取り方と保管

カスハラ事案の記録は、将来のトラブル防止や法的対応の際に重要な証拠となります。記録には日時、場所、関係者、具体的な言動、対応の内容などを客観的に記載します。また、可能であれば複数のスタッフで確認し、署名を残すことも有効です。これらの記録は、個人情報保護に十分配慮しつつ、安全に保管する必要があります。

  

警察への通報基準

カスハラが暴力や脅迫など、犯罪行為に該当する場合は、警察への通報を検討する必要があります。通報の基準としては、身体的危害の恐れがある場合、執拗な暴言や脅迫が続く場合、器物損壊などの財産被害がある場合などが挙げられます。ただし、通報は状況を慎重に見極めた上で行うべきであり、患者さんとの関係性を考慮することも重要です。

スタッフのメンタルヘルスケア

カスハラへの適切な事前対策や事後対応を行っても、カスハラを受けてしまったスタッフの心の傷は簡単には癒えません。カスハラ発生後、メンタルヘルスへの影響は長期化する可能性があるため、スタッフのメンタルヘルスケアはカスハラ対策の重要な要素となります。

  

カスハラによる心理的影響

カスハラは、スタッフに深刻な心理的影響を与える可能性があります。具体的には、不安や抑うつ、自尊心の低下、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などが挙げられます。これらの影響は、単に個人の問題にとどまらず、医療サービスの質の低下や、他のスタッフへの悪影響など、医院全体の問題につながる可能性があります。

  

ストレス管理と支援体制の構築

カスハラによるストレスに対処するため、効果的なストレス管理と支援体制の構築が重要です。ストレス管理の方法としては、リラックス法の習得、定期的な運動、十分な休息などが挙げられます。また、医院として定期的な話し合いを実施し、問題の早期発見に努めることも有効です。支援体制としては、カスハラ体験を共有し、相互にサポートし合える環境づくりが大切です。

  

定期的なカウンセリングの実施

スタッフのメンタルヘルスケアの一環として、定期的なカウンセリングの実施も検討してみましょう。専門のカウンセラーによるカウンセリングは、スタッフが抱える問題を早期に発見し、適切な対処法を見出すのに役立ちます。また、カウンセリングを通じて、スタッフ自身がストレス対処法を学び、自己管理能力を高めることも期待できます。

スタッフの定着率向上について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
歯科衛生士不足が続く歯科業界、定着率を上げるためのポイントとは
歯科衛生士とのコミュニケーション取れていますか?歯科医院におけるチームビルディングの重要性

まとめ

歯科医院におけるカスハラは、スタッフのメンタルヘルス、診療の質、そして医院の経営に大きな影響を与える重要な問題です。その対策には、スタッフ教育、コミュニケーションスキルの向上、適切な情報提供と同意取得、法的知識、具体的な対応手順の確立、そしてスタッフのメンタルヘルスケアなど、多面的なアプローチが必要です。

カスハラ対策は、単に問題行動への対処だけでなく、患者さんとの良好な関係構築にもつながります。患者さんの不安や不満を理解し、適切に対応することで、医療サービスの質を向上させ、顧客満足度を高めることができます。

また、カスハラ対策は医院全体で取り組むべき課題であり、院長のリーダーシップと全スタッフの協力が不可欠です。継続的な取り組みと定期的な見直しを通じて、患者さんとスタッフの双方にとって安全で快適な医療環境を作り上げていくことが重要です。

このような包括的なカスハラ対策を効果的に実施するには、適切なツールとサポートが必要です。MICのサービスは、患者情報管理、予約システム、コミュニケーション支援など、カスハラ対策に有効な様々な機能を提供しています。

  

●関連コラム:「歯科医院でのカスハラとは?具体的な実態から対策まで詳しく解説(前編)」はこちら

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