Newsニュース

歯科 訪問診療の始め方について詳しく解説

歯科 訪問診療の始め方について詳しく解説

高齢化が進む日本で、訪問診療 の需要が急増しています。歯科医院はこの成長市場に参入することで、地域医療への貢献度も高められるうえ、新たな収益源となります。しかし、訪問診療の開始には様々な課題があり、多くの歯科医院経営者が「どこから手をつければいいのか」と悩んでいます。本記事では、訪問診療を始めようと考えている歯科医師の皆さまに向けて、初めの一歩を踏み出すための基本的な情報をわかりやすく解説します。

訪問診療を始めるための準備

訪問診療を始めるにあたり、必要な準備から始めましょう。ここでは、必要な手続きや機材、スタッフ体制について説明します。

  

法的要件と必要な対応

保険医療機関として診療している歯科医院であれば、訪問診療を始めるための特別な届出は必要ありません。
ただし、医院の状況に応じて以下のような届出をしておくことで、より充実した歯科診療やサービスを提供できるようになります 。

● 歯科訪問診療料の注13に規定する基準の施設基準に係る届出
● 在宅療養支援歯科診療所の施設基準に係る届出
● かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準に係る届出
● 在宅歯科医療推進加算の施設基準に係る届出
● 歯科訪問診療料の地域医療連携体制加算の施設基準に係る届出
● 歯科疾患在宅療養管理料の注4に規定する在宅総合医療管理加算及び在宅患者歯科治療時医療管理料の施設基準に係る届出

これらの届出は義務ではありませんが、行うことで訪問診療の幅が広がり、より多くの保険点数を算定できる可能性があるため、経営面でもメリットがあります。各届出の詳細や手続き方法については、地域の歯科医師会や管轄の厚生局に相談することをお勧めします。

  

初心者でも始められる基本的な機材リスト

訪問診療に必要な基本的な機材は以下の通りです。
● ポータブル歯科ユニット
● ポータブルバキューム
● ポータブルライト
● 基本的な歯科器具セット
● 診療記録用タブレットまたはノートPC

初期投資を抑えつつ、徐々に機材を充実させていく方法がおすすめです。ポータブル機器は軽量で持ち運びやすいものを選びましょう。診療記録用のタブレットやノートPCは、効率的な記録管理や保険請求に役立ちます。

さらに、あると便利な道具として、ポータブルのエアクリーナーや小型カメラがあります。エアクリーナーは診療環境を清潔に保つのに役立ち、小型カメラは患者さんの口腔内状態の記録や説明に効果的です。これらの道具は、訪問診療の質を向上させ、患者さんとのコミュニケーションをサポートします。

  

スタッフの役割分担:まずは少人数で始める

訪問診療は、まずは歯科医師1名と歯科衛生士1名の2人体制で始めるのが一般的です。歯科医師は主に診断と治療を担当し、歯科衛生士は口腔ケアや患者さんとのコミュニケーション、機材の準備を担当します。小規模なチームから始めることで、問題が生じた際にも迅速に対応できます。

2人体制のメリットは、役割分担が明確で、コミュニケーションも取りやすいことです。また、移動や機材の運搬も効率的に行えます。診療所のスタッフとも連携を取り、予約管理や保険請求などのサポートを受けられるよう体制を整えることも重要です。経験を積みながら徐々にチームを拡大していくことで、スムーズな訪問診療体制を構築できるでしょう。

  

初期投資と運営コストの試算

訪問診療を開始する際の初期投資には、機材購入費、車両購入費、スタッフ採用・教育費などが含まれます。運営コストとしては、人件費、車両維持費、消耗品費などが主な項目となります。また、訪問診療に関する診療報酬の加算や、在宅療養支援歯科診療所としての算定などを考慮に入れ、適切な運営方法を構築することで経営の安定化につながります。

訪問診療の実践

実際に訪問診療を始める際のポイントを説明します。最初は不安もあるかもしれませんが、一歩ずつ着実に進めていくことが大切です。

  

既存患者からスタート:通院困難になった患者へのアプローチ

訪問診療を始める際は、まず既存の患者さんの中から通院が困難になった方向けに始めるケースが多いようです。 これらの患者さんやご家族は、すでに 診療に信頼を置いているため、訪問診療の提案を受け入れやすい傾向にあります。

具体的なアプローチ方法としては、定期検診の案内時に訪問診療の可能性について触れたり、ご家族を通じて患者さんの状況を確認したりすることが考えられます。また、訪問診療の必要性や利点を分かりやすく説明することも大切です。患者さんやご家族の不安や疑問に丁寧に答えることで、信頼関係を深めることができます。また、診療所のウェブサイトや案内パンフレットに訪問診療の案内を掲載するのも効果的です。

ただし、訪問診療では患者さんの体位や照明の問題、家族や介護者とのコミュニケーション等で予想外の状況に直面することもあります。これらの課題に対しては、柔軟な対応が求められます。家族や介護者とのコミュニケーションを大切にし、患者さんの日常生活や嗜好について情報を得ることで、より適切なケアを提供することができます。訪問診療では、患者さんを取り巻く環境全体を考慮することが重要です。

  

近隣の介護施設との連携:定期的な口腔ケアから始める

近隣の介護施設との連携も重要です。訪問診療圏内にあらたな介護施設ができるなど、外部環境の変化がある場合、訪問診療を始めることを検討する良い機会かもしれません。

介護施設との連携のメリットは、複数の患者さんを効率的に診療できることです。また、施設スタッフとの連携により、日常的な口腔ケアの質も向上させることができます。施設側のニーズをよく聞き取り、どのような歯科診療やサービス が提供できるかを具体的に説明することが大切です。

最初は不安や困難を感じることもあるかもしれませんが、小さな成功体験を積み重ねることでモチベーションを維持しましょう。そのためには小さな成功体験を積み重ねることが大切です。患者さんやご家族からの感謝の言葉を大切にし、チーム内で共有しましょう。また、同じく訪問診療を行っている他の歯科医師との情報交換や、研修会への参加も効果的です。地域における訪問診療の重要性を再認識することで、社会貢献としての意義も感じられるでしょう。

まとめ

本記事で紹介した内容を参考に、訪問診療の立ち上げから運営、そして継続的な改善までを計画的に進めていくことが大切です。法的要件の確認と必要な資格の取得、適切な設備投資、効率的な運営方法の確立、そして継続的な品質向上への取り組みまで、段階的に実施していくことで、質の高い訪問診療 を提供することができます。

訪問診療は、高齢化社会において非常に重要な役割を果たします。地域医療への貢献を意識しながら、一歩ずつ前進していきましょう。

  

●訪問診療標準サービス:訪問先でカルテの確認・入力をしたい

Reference関連情報